お仕事日記1

その日の夕方、私は職場の店長からのスケジュールをメールで確認した後、夏のバーゲンセールが始まった某ファッションビルを一人でぶらついていた。
ショップ店員に勧められるがママかったマキシ丈のワンピースには、背の低い私(152センチ)には、やっぱりイマイチだったかもしれない。
鏡を見つける度にさりげなく覗き込んでは、全身の見た目をチェックして歩く。

ダイエットを意識して上のフロアには階段を使って行くことにした。
高いヒールを履いた足で転ばないように片手を手すりに添えながら階段を登る。
階段が折り返しになっている踊り場に出たところで階段に座り込んでいる女の子とぶつかりそうになった。彼女のにらむような目線を遮り、その横を通り抜ける。
と、急にからだが後ろに引っ張られる。
振り返って見ると、座っている女の子の手が私のマキシ丈のワンピースの裾をしっかりと握りしめていた。

「飲み物買ってきて」
あやうく転びかけただけでも腹を立てていた私に向かって、階段に座っている女の子がそう言ってきた。
文句が口から飛び出しかかった瞬間、どうやら彼女の体調が悪いらしいことに気づいたのだ。
冷房が効いているビルの中なのに、端から見ても分かるぐらいに全身汗をかいている。
しかたなく、具合が悪いなら近くの店員さんでも呼んでこようかと聞いても「ジュースを買ってきて欲しい」の一点張り。

いらついた声で要求ばかりをする他人に自分が親切にしてあげるなんて馬鹿馬鹿しい。

ふと自分が駅の構内で貧血を起こしてうずくまったときの辛さを思い出した。
たしか登って来た階段の脇にジュースの自販機があったはず・・・
渋々階段を引き返し、私は自販機でスポーツドリンクを買った。